猫の病気
2025.08.20
猫の肥大型心筋症
猫の肥大型心筋症とは
猫で一般的な心筋の病気です。心筋細胞の肥大や線維化により、心機能障害を起こし、心不全や動脈血栓塞栓症を引き起こします。また、僧帽弁の収縮期前方運動による動的左室流出路閉塞や不整脈の併発は病気を悪化させます。
詳細な原因は解明されていませんが、一部の品種の猫(メインクーン、ラグドール、アメリカンショートヘアー)では遺伝性が確認されていますので注意が必要です。
正常な心臓 肥大型心筋症を患った心臓
猫の肥大型心筋症の症状
多くの猫は無症状で、見た目上健康な猫の14.7%が肥大型心筋症を患っていると言われています。悪化すると、何となく元気がない、じっとしている、食欲がない、呼吸が早く荒い、口を開けて呼吸している、咳が出るなどの症状が出ます。
猫の肥大型心筋症の診断
胸部レントゲンや心臓の超音波検査を行うことで肥大型心筋症を診断します。心筋肥大の原因となる高血圧症や大動脈弁狭窄症、甲状腺機能亢進症、リンパ腫などの腫瘍性疾患などを除外するために、血液検査や血圧測定を行うこともあります。
下記の症例は左室流出路のみの心筋肥厚を呈し、同時に動的左室流出路閉塞を伴い、僧帽弁逆流を起こしている症例です。
猫の肥大型心筋症の治療
無症状の子に関しては、治療に一定の決まりはありません。ただし、慎重な経過観察を行い、リスク因子として重度の心筋肥厚、左房拡大、血栓形成兆候、動的左室流出路閉塞、不整脈などが存在する場合は、たとえ無症状であったとしても治療介入を検討する必要があります。具体的にはβ遮断薬やカルシウムチャネル拮抗薬、ピモベンダン(心機能改善薬)などを投与し、左房拡大などの血栓症に進行するリスクのある子には抗血栓療法を併用することもあります。重度になると胸水貯留や肺水腫に移行してしまう場合もあり、利尿剤を使用しなければいけないこともあります。
症例紹介
症例は8歳の猫ちゃんで、ぐったりしており、呼吸が荒いことで来院されました。
胸部レントゲンを撮影すると、肺は全体的に不透過性が亢進しており、わずかに見える心臓の輪郭は拡大していました。
心臓の超音波検査を行うと、心筋壁は全体的に肥厚しており、重度の左房拡大と収縮機能の低下を認めました。
治療後は肺の状態も改善し、左房拡大も軽減され、良好な状態を維持できています。
猫の肥大型心筋症の早期発見・早期治療のために
猫の肥大型心筋症は上述したように症状に現れないことがあり、厄介なことに心筋の肥大は内側への肥大を呈することが多く、胸部レントゲンのみでは心拡大が検出されないことも少なくありません。当院では猫ちゃんに対しても健康診断であるにゃんドックを実施しています。コースによりますが、血液検査で心臓マーカーである「proBNP」を測定することが可能で、血液検査により心臓の病気を検出することができます。
また、当院では期間限定(2025年9~10月)で、ストレスに弱く、神経質な猫ちゃんにも安心な「秋の血液健康診断キャンペーン」を実施します。幅広い臓器の血液検査項目に加え、心臓マーカーの「proBNP」はもちろん、高齢の猫ちゃんに多い甲状腺疾患マーカーの「T4」や早期腎臓マーカーの「SDMA」をお得な料金で測定することが可能です。
是非、この機会に血液健康診断キャンペーンを利用し、心臓病など隠れた病気の早期発見にお役立てしてみませんか?
猫の心臓病、血液健康診断についてご興味のある飼い主様は 愛知県東郷町 なぐら動物病院 までご相談ください。
獣医師 安部昌平