お知らせ・コラム

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犬の病気

2025.08.26

犬の肺腫瘍

犬の肺腫瘍について

犬の原発性肺腫瘍は中齢~高齢で起こりやすく、犬の全腫瘍の1%程度です。そのうちの7~9割が肺腺癌であり、そのほかには組織急性肉腫、扁平上皮癌、カルチノイド(神経内分泌腫瘍)などがみられます。残念ながら、肺の腫瘍では良性であることは少ないと言われています。

犬の肺腫瘍の症状

最も一般的な症状は発咳であり、呼吸困難、胸水、活動性の低下、体重減少、喀血などがみられます。ただし、症状がみられず偶発的に発見される場合が30%を占めます。また、腫瘍随伴症候群として肥大性骨症を認める場合は、四肢の腫脹や跛行を伴うことがあります。

犬の肺腫瘍の診断

血液検査で異常が認められることが少なく、胸部レントゲン検査を行い、肺に発生した腫瘍病変を見つけます。肺に複数の腫瘍病変を認めた場合は、他臓器に発生した腫瘍の転移や、感染(寄生虫や真菌)の可能性を考える必要がありますので、超音波検査などを行い全身の精査を行います。さらに、レントゲンでは検出できないような小さな腫瘍病変も転移として存在する可能性もあるため、CT検査にて孤立性の腫瘍かどうかを判断します。肺腫瘍が胸壁に接している場合は、必要に応じて針細胞診や組織生検を行います。

犬の肺腫瘍の治療

孤立性の肺腫瘍であれば、第一選択は外科切除となります。肺腺癌の場合は、転移がなければ外科切除のみで長期生存が期待できますので、外科切除が可能な子に関しては積極的な治療を行うことが推奨されます。

症例紹介

当院で膀胱結石手術を行う予定で、事前の術前検査で偶発的に肺腫瘍が見つかった8歳の大型犬の症例です。

胸部レントゲンで胸腔内に3~4cm大の腫瘍病変を確認しました。

左下のレントゲン 赤矢印が腫瘍

仰向けのレントゲン 腫瘍は左肺後葉に発生している

 

岐阜大学動物病院でCT検査を行い、腫瘍病変は孤立性ではなく、複数の小さな腫瘍病変を認めました。

組織生検により腫瘍は肺腺癌と診断されましたが、腫瘍は孤立性ではなく転移を疑う所見が確認されたので、外科治療は不適と判断し、当院で抗がん剤による内科療法を行っています。

上の写真は本症例で使用している抗がん剤

 

治療の手遅れにならないために(犬の肺腫瘍の早期発見のために)

腫瘍の病気は症状に現れないことがあり、病気の初期段階では自覚症状がないため、飼い主様が日常の中で症状に気づくことはとても困難です。気づけるほどの異変を感じるころには病気はかなり進行しており、もう手遅れというケースも少なくありません。腫瘍によっては、早期発見できれば、悪性であっても積極的な治療で根治を期待できることもあります。病気の早期発見・早期治療のためにも、毎年の健康診断(当院ではわんにゃんドック)を行うことをお勧めします。

 

また、当院では血液検査で「腫瘍マーカー」を測定することができますので、ご興味のある方は、愛知県東郷町 なぐら動物病院 までご相談ください。

 

獣医師 安部昌平