犬の病気
2025.06.23
犬の会陰ヘルニアについて
犬の会陰ヘルニアとは
犬の会陰は、肛門周囲の尾の付け根から陰嚢までの間の筋間の部分を指し、その部分に穴が開いて内臓が飛び出た状態を会陰ヘルニアといいます。
会陰ヘルニアは去勢していない雄犬で発症することが多く、肛門横の筋肉が薄くなり、穴が開き、腹腔内の脂肪や直腸、膀胱、前立腺などが皮下に脱出した状態となります。中高齢の雄犬に発症することが多く、性ホルモンの影響があると言われています。
また興奮しやすく、よく吠えたり、便秘気味な犬が腹圧が高くなるため、発症しやすいです。
犬の会陰ヘルニアの症状
会陰ヘルニアの症状は、肛門周囲が膨らんできて、排尿困難や便が出にくいなどが見られたり、長く放置したことにより血便や血尿、食欲不振や嘔吐なども見られることがあります。
犬の会陰ヘルニアの診断
診断は直腸検査、レントゲン検査、超音波検査などで肛門周囲の状態を観察することで診断します。この際、ヘルニア嚢に脱出している臓器を確認し、重症度を把握します。膀胱が脱出し、排尿困難の場合には腎不全を起こしている可能性もありますので、血液検査も行います。また、長期に放置していた場合、肛門の横に直腸憩室(直腸に便が滞留する部屋ができてしまう)ができてしまう事もあります。
犬の会陰ヘルニアの治療
会陰ヘルニアの治療は、基本的には外科手術によりヘルニア孔を塞ぎます。また、内科的に便を柔らかくする薬を内服し、力まなくてもスムーズに排便ができるようにします。
外科手術によるヘルニア孔の閉鎖には様々な方法があり、犬種や年齢、程度により手術方法を検討し行います。
写真はフレンチブルドッグの会陰ヘルニアの手術前のものです。
肛門の右側に穴が開き、腹腔内の主に脂肪が脱出していました。幸い膀胱や直腸はまだ落ち込んでおらず、便秘や排尿困難などはありませんでした。まだ若い子ですので、再発のリスクを少しでも減らすため、直腸腹壁固定(直腸が肛門の方に押し出されないように腹壁に固定)を行い、去勢手術も行いました。
ヘルニア孔は肛門周囲にある肛門括約筋と内閉鎖筋、仙結節靭帯に糸をかけ縫合し、閉じました。
術後のお尻
犬の会陰ヘルニアの再発予防
興奮しやすく、よく吠える犬や便秘気味の子の場合、日常的にお腹に力が入り、肛門に力が加わるため、再発してしまう危険性が高くなります。再発を防ぐためには、興奮しないように生活環境を整え、便が柔らかくなるような食事や水分の管理を行い、薬の服用などの生涯を通して管理が必要です。
会陰ヘルニアでお悩みのわんちゃんは、愛知県東郷町 なぐら動物病院までご相談ください。
獣医師 名倉美智子