お知らせ・コラム

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犬の病気

2024.04.06

犬の肺高血圧症

肺高血圧症とは

肺動脈圧の上昇をもたらす様々な原因となる病気の結果として生じる病態です。原因となる疾患は、肺動脈性、肺疾患、慢性肺塞栓、左心疾患に分けられます。

肺動脈性 : 原因不明に肺血管の内腔が狭くなる、もしくは塞がってしまい、肺血管抵抗が増加してしまうことで本疾患につながります。ここに区分される病気は、特発性肺動脈性肺高血圧症、動脈管開存症や心室中隔欠損症などの生まれつき持った心臓の病気、門脈高血圧、住血吸虫などの寄生虫関連があげられます。

肺疾患 :  人では肺炎が一般的な肺疾患ですが、睡眠時無呼吸症候群の様に肺以外の呼吸器疾患によってももたらされます。犬では特に特発性肺線維症に伴う報告が多いです。

左心疾患 : 肺高血圧症の原因として最も多いです。左心から来るうっ血が肺動脈へと伝播されることで生じます。

慢性肺塞栓 : 血栓が生じることで起こります。犬ではフィラリア症もここに分類されます。

 

肺高血圧症の症状

運動不耐性(疲れやすい)、ハァハァ息切れする、失神(特に運動時や興奮に関連)、痙攣、突然死が一般的で、発咳や喀血が認められることもあり、ひどい場合はチアノーゼを起こします。

 

肺高血圧症の診断

レントゲン検査で右心の拡大や肺動静脈の拡張、肺疾患所見を確認し、心臓の超音波検査で三尖弁の逆流や肺動脈弁の逆流、肺動脈流速、同時に最も原因として多い左心系の確認を行うことで、肺高血圧症の診断をし、その原因となる病気を探していきます。血栓の有無は血液検査で評価することができます。しかしながら、これらの検査を行っても原因を特定できないケースも多いと言われています。

 

   

肺高血圧症の治療

肺血管拡張薬を使用することが多いですが、原因が左心であれば肺血管拡張薬で逆に悪化させてしまうこともありますし、血栓の場合は抗凝固薬の使用、肺呼吸器疾患の場合はそれに対する治療など、原因となる病気によっては治療の考え方が大きく変わりますので、原因を特定することが大事になります。

 

症状がなくても一般健診での聴診により発見にいたることもありますので、定期的に動物病院で診察を受けることが大切です。

 

 

 

なぐら動物病院 獣医師 安部昌平

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